1ルーム

色々な1ルームを作って、シリーズ投稿しています。

No.3 部屋の広さより夜更かしの長さを〜香ばしい魔法の時間〜

住むなら、お金があるなら、広い家がいいでしょうか。

自由にできる空間が広がったんです。いいことです。

どんなことでもできそうです。ラジコンカーを走らせる、人を集めて飲み会場にする、でっかいプロジェクターなんかで映画館みたいにする。でも、全部終わった後、静かになりませんでしょうか。

賑やかだった後に不意にくる静けさ。そのとき、やっぱり1人がいいなと思うでしょうか。寂しいと思うのではないでしょうか。床が冷たくなるのではないでしょうか。

1人でいることだって素敵な時間なはずです。でも、そんなふうに思えないのはなぜでしょうか。それは、部屋が広いからです。広いという理由だけで、人が来るからです。人が来れば1人で考えなくても何かできるからです。何かできている間は、1人ではないからです。だから、1人の時間は広い空間では作れないのです。

 

1人の時間は、これまでどれくらいあったでしょうか。

出勤している時は1人の時間でしょうか。みんなと一緒に駅に向かって歩いているので、1人の時間ではありません。

家に帰って家族にただいまといってからは、1人の時間でしょうか。その後家族と食卓を囲むので、1人の時間ではありません。

寝る前にゲームをしている間は、1人の時間でしょうか。プレイ中は楽しいかもしれませんが、寝る時間が近づいてくると憂鬱になるのではないでしょうか。明日、またみんなと一緒に駅に向かうとわかっているからです。これもまた、1人の時間でなくなりつつあります。ただ、もしここで、もう少しやろう、まだセーブポイントは早いと思えたなら、そこから1人の時間が始まります。夜更かしこそ、始まりです

 

夜更かしは、いけないことです。だけど、やりたくなっちゃうことです。罪なことをしたくなります。夜ご飯を食べたのに、コンビニで夜食を買いに行く。ビールとおつまみならまだしも、冷凍チャーハンを買い、食べないとわかってるアイスを買う。帰ってきたら、なんかアイスから食べちゃう。あ、冷凍チャーハン食べないと。あ、おつまみも残ってるじゃん、一緒にレンチンしてしまうか、みたいな(笑)。もうなんでも勝手な、過激タイムです。

夜更かしは、過激です。自分の欲望がどんどん出てきて、誰も止めるものがいないのです。普段は周りに誰かがいるから自然と押さえます。でも今はみんな寝静まっている。自分だけ起きているんです。もう、治外法権の範囲に来てしまっています。だからどんなこともできるんです。していいんです。でもだからこそ、最後の品格というのが求められてきます。飲んだら片付けること、プラスチックはプラごみの袋に分別すること、顔もちゃんと洗って歯磨きもします。ゲームはちゃんとセーブしないといけません。

夜更かしは、大人の事情です。仕方がなかったんです。翌日、昼間に目を覚ました時、そう思えれば幸せな時間だったんです。きっと、身体はぐったり疲れているでしょう。寝たことが逆に負担をかけたみたいです。それが、1人の時間の代償です。

 

1人の時間でも疲れます。広い部屋でみんなと遊んだ時よりも、疲れます。

だから僕は、部屋の広さより、夜更かしを選びます。

1人になる不安を、罪悪感であれほど香ばしくできる、魔法の時間を。