【短話】花火のまつり
しかし、こんなに蒸し暑いから、海の上だとマシだと思ったのに、この気温じゃたいして変わんねぇ。
そう思いながら、祭り用の花火を準備をしていた。
少し離れた港の方をみると、まだ三時間前なのにくる人はくるし、車もさっきより増えていた。
難儀だなぁと思い、頭につけた鉢巻がずるっとずれる。
時刻はそろそろ。日も暮れて、露店の光が立ち並ぶ。
こちらの方は真っ暗である。前々から用意して、丁寧に一枚一枚を巻いて作った花火玉。
これをこれからおかまいなしに点火してしまうと考えると、切ない気持ちが拭いきれない。
さあ、お願いしますよと、肩を叩かれた。
これでもかという人の賑わいが、さっと打ち消された。
一発、どかっとあがった。
空気が揺れ、遅れて、みなの息が漏れていった。
感動する者、喜ぶ者、そしてこういう者。
「明日から仕事か。」