1ルーム

色々な1ルームを作って、シリーズ投稿しています。

ゴミにさようなら

No.4 ゴミにさようなら

ゴミ屋敷の隅っこに、それはあった。自分の部屋であるというのに、すっかり知らない。 側にあるのにもかかわらず、遠く冷めているところに置いてかれている。 ゴミ袋であることに違いなく、ただ、容量の限界に対して平気と言わんような膨れ具合だった。 緊張…

No.3 ゴミにさようなら

トンネルは暗くて怖いが、自分の部屋なら暗くても怖くない。 たとえ、ゴミ袋が頭の上でアーチを作り、ある種のトンネルにいるとしても。 目の前には、ゴミ袋から出てきたソーセージによる嘔吐で、内臓までもが転がり落ちている。 内臓をみる機会がないものだ…

No.2 ゴミにさようなら

前足二本の少し先には、ゴミ袋が分岐道を作っている。 光が袋の壁を当て、波々とうねらせている。 足は待ちきれず、指だけが前に動き始める。 足裏は仕方なくついていくというように土踏まずを凹ませる。 引き返すことだけは許されないという具合に、膝小僧…

No.1 ゴミにさようなら

身体の左右は、ゴミ袋に挟まれている。 軽く腕を動かすだけで、ガサガサっと音がする。 袋のプラスチックの匂いが鼻をかすめる。 より意識をすれば、別の臭いがしてくる。 生ゴミだ。この部屋の隅で、見えない煙のようにもくもくと、さりげなく佇んでいる。 …