1ルーム

色々な1ルームを作って、シリーズ投稿しています。

2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

【短話】波に流される前に

おき、た。 め、が、あいた。 くらい、くろ、まっくろくろ。 でも、ながい、ながいくろ。 どうにも、とおくにあって。 あるこうとはおもわない。 しかたない。 しかたない。 しかたな…い。 きこえた。 むこうに。 おとが。 な、みの、おと。 よって、ひいて…

【短話】かげの足

夕暮れ時を、ある道のところまで歩いていました。 僕はそのとき、落ち込んでいたんだと思います。 影が、ずっと僕より伸びて、ずっと細かった。 背中は暖かいより暑くて、なんだかボーッとして。 影が、右に揺れた。影が、左に揺れた。 僕は、まっすぐ歩いて…

【短話】受付ない図書館

えきのすぐ近く。 だれが建てたのかしらないが、石でできたりっぱなビルが一つ。 はいってみると、内側のカベは汚くって、わたしはがっかりしていた。 のぼろうとすると、エスカレーターもない。 階段をあがっていく。 どの階も空き部屋ばっかりだった。 で…

【短話】お金配り

きょうも夜おそくまで働いています。ここんところ毎日です。 え、なにをしているかって? みんなから、おかねを集めるお仕事です。 それでぼくは、偉いひとからおかねをもらっている。 おかねを集めているのに、おかねをもらってるんだよ。 へんだね、そうだ…

【短話】月光浴する靴

午前0時。家の玄関は静かです。そこにひっそりと、月明かりが。ドアの窓から誰に言われずとも。そっと、靴箱の隙に差し込んで。 靴箱から、ガタガタガタガタ音がする。磁石でくっつけられた扉が揺れていて。ちょっと隙間が空いたらまた閉じつつ。ゆらっとゆ…

【短話】犯人の動悸

ぼくはちがいます。ぼくはやってません。 そうやってひとにいうとき、ぼくはなにをしているんだろう。 とりあえず、いってみたかったのである。 もし、それがほんとうにぼくのしていることでなくっても、やっぱりいってみたかった。 え、ぼくがそれをしでか…

【短話】細い木

ある夜、ぼくはベットですやすやとねていました。 ねていたのですが、ねていることにきづいてしまいます。 ぼくは、ひさしぶりにじぶんの寝姿を、肌で感じることができています。 ちょっぴりうれしい。 腕をまげて、あたまのほうにあげながら、あかんぼうの…

【短話】ドライアイスの暖炉

寒かった。さむかった。 僕は暖かい家庭にうまれてきました。 けれど、その暖炉は、ドライアイスのように冷たかったのです。 手を当てれば、さいしょはあたたかい。 でもだんだんと、そう思っているじぶんが変であると、ちょっと気づいていきます。 そしたら…

【短話】沈みたい夕日

沈みはじめました。 これまでなんとか浮かんできたのですが、とうとう、精一杯です。 いろんなひとが、ぼくをながめています。 でも、ぼくをたすけてくれるようなひとはいません。 ほんとうです。ひとりもいないのです。 ぼくにはトモダチがすくないのでしょ…

【短話】べたっとした外

その日は大嵐でした。 かぜがびゅーびゅーふいて、まどがガタガタゆれています。テレビをみているおとうさんは、ときどきにゅーすをちぇっくしたり、ばらえてぃばんぐみをみていたりします。 ぼくは、いえのなかも、なんか外みたいだなとおもいました。だっ…

【60秒物語】チャーハンになった本

足元にいっさつ、本がありました。 その本はほこりまみれで、とても読めそうにありません。 けれど僕は、ほかにすることがありませんでしたから、読んでみました。 でもこれが、なかなか読めない。なんたって、ひょうしがあかないのです。 誰が付けたのか、…

【60秒物語】布団の下の地震速報

またはじまった。じーっと、じーっと、ぼくだけにきこえる音。 おとうさんにはきこえない。おかあさんにもきこえない。 もしかしたら、おとうとにはきこえているかもしれない。それだとちょっと安心。 でも、まいにちきこえているのはぼくだけだろう。だって…

【ショート】父の日の助手席

ちちは優しいひとでした。めったにおこらないし、いつもいつも、かわいいねといってくれました。 きょうは、ちちのひです。ぼくとおかあさんとちちは、車にのりました。 くるまはいつも、ちちがうんてんします。けれどきょうは特別。ははおやがうんてんしま…

【ショート】揺れたがる木

うちの公園には、おおきな木があります。 どれくらいかというと、ぼくの身長の、何十倍もの高さです。見上げても、てっぺんがみえないくらい。すごくりっぱです。 でも、寂しいときもあるようです。 あるときは、葉っぱを落として、こっちを向いてほしいとい…

【ショート】道の道

きんじょにみちが有りました。いっぽんみちです。ぼくはいつも、そこをとおるのがこわかったです。 だって、とってもくらいんです。とちゅうからすぐ暗くなる。おまけに、そこからまがっていて、つづきがどうなっているのかわかりません。だから怖いのです。…

【ショート】カラス用のゴミ袋

からすがいました。くろい黒いからすです。このからすは、悪いことをします。 たとえば、人のごみぶくろをあさります。それで、ごみを散らかしたままどこかにいってしまうのです。 でも優しいからすもいます。そのからすは、ちらかったごみを片づけます。ぜ…