【60秒物語】チャーハンになった本
足元にいっさつ、本がありました。
その本はほこりまみれで、とても読めそうにありません。
けれど僕は、ほかにすることがありませんでしたから、読んでみました。
でもこれが、なかなか読めない。なんたって、ひょうしがあかないのです。
誰が付けたのか、油でべとべと。
それでもなんとか開きました。
するとくさいくさい。
油たっぷりに作ったチャーハンが、一度下水道を通って、一粒残らず拾い上げられた後のザルみたいな臭いです。
きっとこの読者は、本を読みながらチャーハンを作っていたのでしょう。
ぼくはそうおもって、ページをめくります。
けれど、何が書いてあるかは読めません。
それにだんだん、もじがつぶみたいになっていき、そうか、これがチャーハンなのでした。
ぜんぶこれは、ちゃーはんだったのです。