1ルーム

色々な1ルームを作って、シリーズ投稿しています。

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

その日新聞 第二号

『その日新聞』第二号 自分がやりたい企画だけを詰め込んだ一面新聞です。 ブロッコリーの好きな男の子が、観光地で銃を見つけて… 短編「ブロッコリー」 本が読みたくなくなるのは、気持ちが綿菓子だから… 気持ち賞味期限論「読みたくなくなる二週間」 文章…

『その日新聞』第一号

『その日新聞』第一号 自分がやりたい企画だけを詰め込んだ一面新聞です。 短編/気持ち賞味期限論/[勝手版]論文の作り方/暮らしの夢日記/「作品」の反対語/隣町9丁目2番4号の会話/会社辞める口実辞典/当てずっぽう著者紹介 下記サイトで購入もできます。http…

【短話】屑拾い

下着一枚だけで寝ている。今日も屑拾いで疲れた。誰もやらないから、誰かがやる。あの田んぼのあたりによく落ちている。十五時、十六時ぐらいの時間帯がいい。その時間に拾い始め、夕方に終わる。夕方が暮れると、怖い道になるから。ジャングルみたいな道に…

【短話】月イチの店番

結婚してから数年になる。家のお手伝いをしながら、過ごす。と言っても、一ヶ月に一回ぐらい。うちの家は、小さな書店だ。家の手伝いと言ったのは、店番のこと。私は座って、人が一冊選ぶのをみるだけ。夫は本の仕入れに行く。 この日は、なぜか荷物を預かっ…

【短話】池田

小学校四年の時、夜遊びに出かけた。家でトラブルがあって、我慢ならなかったから。外をぶらぶら歩くだけ。何もすることがないのは、何かしてしまうことに不安があったから。人でも殴ってやれやぁいいのに、そんなこと微塵も思わない。それに俺は、ボコボコ…

【短話】洗濯機

私、お母さんの生活は、洗濯だ。洗濯機を回している間に、新聞が届く。めくると、金魚と書いた記事。金魚をイメージしたお弁当箱が流行っているらしい。海苔が金魚の形で、ご飯が水。箱が金魚鉢。今は七時半。ゆっくりコーヒーを飲んでいる。仕事の準備をし…

【短話】お産

山奥に潜むおうち。食器が揺れる音がする。私はそこに住んでいた。住んでいたというのは、もうだいぶ前の記憶だから。子どもを産んだんだと思う。それくらい曖昧な記憶。私は確か、庭に寝転がっていて、草をテキトーにむしっていたと思う。手のひらにくっつ…

【短話】寺山修司

公務員として働いてもう三年になる。机の下にはいつも寺山修司を忍ばせ、仕事の合間にちらっとページをめくることにも慣れた。 もう四月で、年度が切り替わる時期に来ている。同時に、仕事を辞める人にとっての時期でもある。 その人が退職するということで…

【短話】遅刻

遅刻だ。 時計を見ると八時半、もう間に合わない。 みんなどうして起きれるのか不思議だ。 両親だってよく会社に遅刻するのに、私以外の家族は本当にすごい。 朝起きて、もう学校無理だなと思って、のびのびベットから上がる。 一階に行くと、二階の天井から…

【短話】幼稚園

幼稚園は楽しくなかった。土がなかった。工事ばかりしていた。 遊ぶ時間、誰もが静かだった。みんな、部屋の方が賑やかなのに、でもだから、その部屋から追い出されたのかもしれなかった。 一言でいえば、その幼稚園は安っぽかった。他の施設だとお金が高く…

【短話】愛

発達障害。診断されたのは昨日のことだった。自分が何者かわからない。女友だちにそのことを相談したけれど、「ああ、それゃ私、いつもお世話になってるわよ」と言われ、なんだか嫌になったので切った。 家に帰ると、宗教の本が目につく。メンタルが辛くなっ…

【短話】窓

秋田県から八王子まで、一体どれくらいかかっただろうか。途中、山が見えた。山の子どもたちが何度も通り過ぎて。 東京はビルばっかりだった。工業地帯で、疲れたサラリーマンが通う街。誰も働きたくて生きていないように見える。それを私は、家の窓から眺め…

【短編】電線

電柱に一羽、とまっていました。休んでいるようでした。頭をキョロキョロ動かして、じっとしています。何を見ているんでしょう。どこを見つめているんでしょう。きっと、向こうの電柱にいるあの鳥です。 二匹の鳴き声は違います。先ほどの一匹は、ピーッと鳴…

【短話】檻

冷蔵庫を開ける。 大量の卵。 オムライスを作ろうと思った。 1日目。ケチャップを入れすぎる。 2日目。卵が柔らかすぎる。 3日目。ケチャップライスがぬめっとする。 4日目。同じ味に飽きてきた。 5日目。ふわとろにしようと思う。 6日目。ふわとろに…

【短話】ゴミ箱

人々が歩いている。 熱い蒸気に包まれて。 臭いが立ち込める。 人の汗。乾いた草の匂い。そしてゴミ。 自動販売機から少し離れた角に、ゴミ箱があった。 とっくに溢れていて、混ざった塊のような臭い。 それが好きな人もいるかもしれない。癖になるような臭…

【短話】イヤホン-「午後五時なのに、夜みたいに暗かった。」

僕は自分の足を溝に突っ込んでしまう。 ふらっと歩いているからではある。 けれど毎日、入ってしまう。 雨の日なんて最悪だ。ドブが流れているところに、右足を突っ込んでしまう。 その癖というか、衝動というか、そういうものが出てきたのは、ちょうど退職…

【短話】隣のベンチ

郵便ポストに溢れたチラシ。 その重なりを見ると感心してしまう。これほど、誰かが一つ一つのポストに投函しているのか。 僕は一応、全てに目を通す。その人が入れてくれた一枚一枚。スーパーの広告、脱毛無料、電気屋の広告、猫を探してますの広告、そして…

【短話】一定の周期

翌る日。インターホンが鳴らなくなった日。 * 長閑な土曜日だった。時計を見ると午後一時。昼ごはんも済ませ、ベットで寝転がっていた。 ピンポーン。インターホンが鳴った。あの音には慣れない。いつも怒られた気がする。 荷物が届いていた。「〇〇急便で…

【短話】月の誕生日

ホームセンターに寄った。 植物のコーナー。独特の匂いに惹かれた。 一際、目立った植物。一種類、一つだけのそれ。 吊るされているような生え姿。 * 千三百円で購入した。見た目の割には重い。ビニール袋が揺れる。 玄関先に置くか。テーブルに置くか。ト…

【短話】コーヒー普通のやつ

誰だか知らない音楽が流れる。 どこだかわからない景色を走る。 友だちと一緒に複数人。高速道路を走っていた。 交わす言葉もない。音楽と走る音だけが聞こえる。 時々珍しいものが見えると、誰かが言う。みんな、ほぉーっと応える。 各々、もちろん面識はあ…

【短編】涼しさ

待て待て待て 待ちな待ちな待ちな ほら見たことかほら見たことかほれ見たことか 言った通りだろう言った通りだろう言った通りだった でも悪夢でなくってでも悪夢でなくってそれでも悪夢でした 夢から覚める前はこんな調子だったらしい。覚めた後も、口元がそ…

【短話】レジ袋

歩道を歩いていた。 信号待ち。向かいで手を繋いだ親子。信号待ち。 横断歩道。子どもが手をあげる。母親がそれを褒める。後ろを通り過ぎる。 その時だ。顔に何か当たった。息ができなくなった。バサっと、覆い被さった。 慌てて外す。視界の光度が増した。…

【短話】段ボール

ガタン。 ドアが揺れた。風が強い。日中だが、曇っていた。 ヒュー。風が吹き込んでくる。扉が揺れている。立て付けが悪かった。 それでも部屋の中は蒸し暑い。エアコンをつけている。ドアからの風はあつい。エアコンの風は冷たい。 時間が経った。気づくと…

【短話】机の下のネコ

ある時玄関に入ってきた。扉を開けていたからかもしれない。部屋が蒸し暑くて、窓だけじゃかなわなかった。ニャーっと、鳴き声が蝉に紛れて。 玄関を過ぎれば一室しかない。そいつは机の下に入り、ちょっと寝る。時間が経てば、窓から出ていく。外の石垣に飛…

【長編】冒険の神話(16)最終話

その火山は静かに活動していた。またいつ激しくなるかわからないが、それもしばらくなさそうだった。 麓は落ち着いていた。静かすぎるくらいだった。動物の気配など一欠片もない。ただ、穴がボコボコと開いている。火山の地下で漏れたガスが、周りで抜けてで…