1ルーム

色々な1ルームを作って、シリーズ投稿しています。

【短話】屑拾い

 

下着一枚だけで寝ている。
今日も屑拾いで疲れた。
誰もやらないから、誰かがやる。
あの田んぼのあたりによく落ちている。
十五時、十六時ぐらいの時間帯がいい。
その時間に拾い始め、夕方に終わる。
夕方が暮れると、怖い道になるから。
ジャングルみたいな道になるから。
誰かがきっと、かくれんぼしてる。
テレビの雑音が聞こえてくる。
そういう、昔話だけどね。

 

次の日は台風だった。
それでも午前中の人と交代で、私は出た。
この作業は大人数ではやらない。
外を出ると、顔に写真が張り付いた。
友だちの家の写真。
トタンの家、台所が見えている。
泥だらけだから後で洗ってやろう。

 

道脇の草は、泥が混じって歯磨き粉状態。
おかげで道がぐしゃぐしゃにならない。
こんな日の外出、母に怒られるかしら。
母を思い、祖先を思う。

 

着くと、小さな竜巻同士が喧嘩していた。
この村の竜巻と、外から来た竜巻。
風の勢いが足りないことで喧嘩していた。
真面目な村竜巻は、風は右回りがいいと。
粘っこい外竜巻は、左回りがいいと。
どっちもどっちでしょうと、思った。
このままだと作業ができない。
だから、褒めることにした。
「いつも頼りにしてますよ」村竜巻。
「いざとなればやってくれるね」外竜巻。

 

彼らは風を弱め、一箇所に集まった。
そうして一つになって、雲を寄せた。
すると、その雲から屑が落ちてきた。
晴れた天気。私は元気に袋に詰めた。