1ルーム

色々な1ルームを作って、シリーズ投稿しています。

【聞き取り】ある火災事件

ここで何があったんですか。
みりゃわかるだろう。火事だよ火事。
でも私には見えないですし。
わかるでしょ、俺の肌みればさぁ。
ええ、まあ確かに、爛れています。
ったく、本当に痛かったんだから。知ってる?火傷で死ぬって気持ち。
いや、わからないです。
急だったよあれやぁ…。ストーブかな。冬でもねぇのによぉ。火が付きよったんだ。知らないところでね。台所に置いてたかな。きっと、そこのガスとなんか引火したんだろうと思うが、まあわかんねぇ。気づいたら周りが火の海でよ、逃げ場なかったね。
ドアとか空いてなかったんですか。
空いてたけどよ、もう熱くて進めなかったんですわ。どうしようもなかったね。天井がづわって倒れて、足元で燃え盛ってねぇ。あれゃぁ大変だった。
それで、もうそのまま?
なんとか出ようとしたよ。試みたさ。でも、膝の方まで火が出るわ出るわ。もう年だったんでね、跳ぶ元気もない。
お連れさんはいらっしゃらなかったんですか。
連れはいなかったな。外に出てた。近くの娘に会いに行ってたよ。まあ、おかげで巻き込まれなかったのは良かったけどさ、俺が死んで退屈だったろうに。
なくなってからも、お父さんはしばらくここにいたんですか。
あー、まあな。やっぱ心配だったよ。
お連れさんは、大変悲しかったでしょう。
それぁそうだ。こっちからは何もできなかったから仕方ないけどさ、こっちもこっちで辛いよ。ずーっと泣いているところをよ、ずーっとこっちも見るしかないんだぜ。
ええ…。
肩をさすってみたけどよ、それも意味がない。すり抜けるんだから。
…。
あーでも一度よ、向こうが気づいてくれたことがあったんよ。
へぇ、そうだったんですか。
料理をしている時かな、切った野菜を落とした時にしゃがんだんだ。そしたら、台所の隅で立っていた俺の方をスッとみてよ。俺は感動してびっくりしてたんだけど、向こうは別に、ただチラッとみただけで、そのあとは何にもなかったな。まあでも、俺はそれで満足してよ。そっからはもう大丈夫だって思えたな。
そうですか。よかったです。あの、最後に聞いてもいいですか?
なんじゃ。
死ぬって怖いですか。
なんだ、そんなことかい笑笑…。あー、怖いさ。痛いからね。俺の場合は。まあ、でも途中で煙吸って、息できなくなったから、気失ってな、死んだけどよ。まあ、死ぬ時は痛みを感じないのが一番だな。死なないで生き続けることはどうせ無理なんだしよ。それでできれば、一瞬で死ぬってことだな。痛いのは嫌だ。もちろん、どうせ死ぬならって話よ。
なるほど。興味深いお話、ありがとうございました。急に伺って申し訳ありませんでした。
いいよいいよ、たまに話せてよかったよ。また、なんかあったら声かけてくれよ。
はい。ありがとうございます。いえ、ありがとうございました。
はいは〜い。