1ルーム

色々な1ルームを作って、シリーズ投稿しています。

【短話】朝ごはん

白ごはんが食べたい。そう思った。けれど、お椀がない。食器棚を見たが、お椀だけがなかった。炊飯器には、炊けたご飯が入っている。
朝早く起きて、お米といで、手が冷たい思いをして、お腹すいたのに一時間待って、ようやく炊けたと思ったら、この結果である。
何を使って食べるか。箸だ。箸もない。しゃもじか。誰も見てないけれど、ちょっとバチが当たりそうだ。ここは手しかない。
テーブルに布巾を、器を置く。

 

さて、これから炊飯器に手を入れるのだけれど、ちょっと勇気がいった。別の国だと手で食べるのも普通だ普通。文化の違いだ文化。今からここは、朝の5分間だけ違う文化になりました。はい、いただきます。と呪文を唱える。
はて、指を揃えるべきか。それとも三本指で摘めばよいか。
ええい、もういい。ガッと先端からいった。

 

熱ッ。何度だこれ。
思わず叫んでしまった。窓が開いている。鳥の声。あー、隣に聞こえたな。
ご飯がこんなに熱いと思わなかった。全然食べれないじゃん。
んー。このまま待っていたら、家出るの遅くなる。早急に対策を考えた。
そうだ。水で濡らして食べればいいか。蛇口で手を濡らす。
さーて、食べるぞー。
熱くない熱くない。いいぞいいぞ。手のひらに収まるご飯。よしっと、口に放り込もうとした。
すると滑った。水を濡らしすぎたか。あー、床に落ちてしまった。水っけも含んでるからもう汚い。

 

一回落ち着く。問題点は、水の量だ。手のひらにどれくらいの水を張ればいいのか、それがわかってないこと。よし。
濡らした手を、タオルで柔らかく当てる。
掴めた。口に入った。
おいしいなぁ。ご飯。久しぶりに食べたけど、米ってこんな甘いんだなー。噛むほど甘く感じる。あー、なんか醤油かけたくなってきた。
冷蔵庫を開ける。なかった。醤油もなかった。何もないなこの家。
ただ奥に、ラップした大皿があった。チヂミが入ってる。
チヂミなのに醤油ねーのかよ。あ、ソースか、チヂミは。

 

もっと漁ると、あーやっぱり、奥にあったぞあったぞ。
ソースを取り出す。全部、ご飯にかけた。
ところが。
ご飯は粒が立たなくなり、全体のボリュームが縮んでしまった。ソースの油のせいだろうか。
おいしくなかった。油で舌がギトギトした。

 

もう。それでも残すのはいけないと思い、何とか流し込む。
うー、まずい。いつのソースだよ。
とりあえず空になったので、椅子を引く。
ぐちょ。音がした。滑りがあった。右足だ。
あー、さっきのご飯。とほほ。前にかがもうとする。
ぐちょ。左足。音がした。こっちの方がベトっとして。