1ルーム

色々な1ルームを作って、シリーズ投稿しています。

【短話】洗濯機

私、お母さんの生活は、洗濯だ。
洗濯機を回している間に、新聞が届く。
めくると、金魚と書いた記事。金魚をイメージしたお弁当箱が流行っているらしい。海苔が金魚の形で、ご飯が水。箱が金魚鉢。
今は七時半。ゆっくりコーヒーを飲んでいる。仕事の準備をしなきゃなぁって思う。
どれくらいの時間、働くのかなぁって思う。肩を回して、首を回す。昨日はちょっと寝過ぎた。身体が凝ったのだ。
一息つく。そろそろ会社に行かなくてはいけない。

電車に乗りながら、お昼の一時間、何をすればいいかを考える。くつろぎたい。でも、それがなかなか難しいのよね。とりあえずお昼ご飯は食べる。
食べている時って、一体何を考えているのかしら。きっと、午後の仕事のことよね。
25世紀の電車デザインについて考えなきゃいけない。ガタンゴトンという電車のイメージを大きく変えるという、上の思いを実現しなくてはいけない。
駅を降りる。会社の方へ向かう。
ビルが高い。窓口で受付ける。受付嬢の顔が白くなったり暗くなったりする。影だ。ビルに差し込んだ光が、通る人々を移していく。
入り口に入り、エスカレーターのボタンを押す。
いま、何階に行こうと思って押したのかしら。

上昇する。上昇しているか。上には上がっているが、うねりがある。
めまい。頭の中がヒラっとする。
はためいた。エレベーターに空いた窓が、暗くなったり、明るくなったりする。
着いた。音がなる。
その時、思い出す。
洗濯機を回したままだったこと。