1ルーム

色々な1ルームを作って、シリーズ投稿しています。

【短編】涼しさ

待て
待て
待て

待ちな
待ちな
待ちな

ほら見たことか
ほら見たことか
ほれ見たことか

言った通りだろう
言った通りだろう
言った通りだった

でも悪夢でなくって
でも悪夢でなくって
それでも悪夢でした

夢から覚める前はこんな調子だったらしい。
覚めた後も、口元がその文言を覚えていた。
呼吸が短くなって、背中の周りに汗が滲んでいた。

朝はいつも忙しい。
最も忙しいのが、起きた時。
起きる前と起きた時の間。

何かに急かされた。
何かに起こされた。
そうそう、誰かに。

悪いことじゃない。
だって会社に行けるんだもの。
目覚ましなしで起きれるって素晴らしい。
えらいぞえらい、そうそう誰かに。

夜もすっかり寝れます。
疲れてぐっすり寝ることできます。
土日もちゃんと休憩取れます。
本当に健康です、健康健康誰かにそう。

七時。
朝食を済ませなくてはいけない。
パンを焼く。
その間に、リュックを詰める。
歯磨きをする。
顔の髭を整える。
髪の毛も整える。
目の下が窪んでいるのを確認する。

パンが焼けた。
ケータイでニュースをチェックする。
ジャムをつけて頬張る。
なんだ、また殺傷事件か。
ビニールで覆われ囲う警察。

いい時間になる。
そろそろ出なくてはいけない。
窓を閉める。
ドアを閉める。
エアコンを消す。

ああ、洗濯したままだった。
洗濯物を干す。
ピシッと、一つ一つ伸ばして吊るす。
自分に気合が入りますように。

よし。
登校する子どもの声が聞こえる。
ドアを開ける。
誰もいない部屋に、行ってきますと言う。
今日はやけに涼しい。
ああ、空はいつまでも青いな。

すると、女性の叫び声が聞こえた。
裸、裸裸裸、変態!