【短話】犯人の動悸
ぼくはちがいます。ぼくはやってません。
そうやってひとにいうとき、ぼくはなにをしているんだろう。
とりあえず、いってみたかったのである。
もし、それがほんとうにぼくのしていることでなくっても、やっぱりいってみたかった。
え、ぼくがそれをしでかしたんだって?
ちがいますよ、まさか、ぼくじゃあない。
じゃあだれがって?
そりゃぁあなたでしょう。いいだすほうがあやしいんだから。
そうやってまた、こんどはだれかのせいにしてみたくなる。
こまるこまる、ぼくもあいてもこまってしまう。
どきどきどきどき、心臓がたかまって。
おたがいが、おたがいのいいだしっぺになっていく。
しまいに、ぼくのかんがえる理想としては、やっぱり、だれもがわるくないということです。
お互いつかれて、さ、ねましょ。