【短話】運転
雨の中、男は運転していた。
ふてぶてした顔で、隣に座っている者も、どこをみるあてもないようにいた。
ワイパーを一番早くに設定した。
それくらい、正面が雨ざらしになるのが早かった。
ワイパーは、雨を避けているのか集めているのか分からないぐらいだった。
空調はガンガン効いていて、外はきっと、これだけの雨なのに蒸し暑いだろう気温になっている。
水たまりの道と化した歩道を歩く子どもたち。
小学校の帰りだろうか。まだこの時間だから、ひどくなる前に帰らされているのだろう。
足には長靴を履いている。
「そういえば、近頃長靴を履かなくなりましたね。」男は隣にそう呟いた。
「うん、まあ、車があれば濡れないしな。」
車はそのまま横断歩道を通りかかった。
信号は青だった。左にハンドルを切り、左折をする。
ガコン。車体の足が少し浮いた。