【短話】河沿い
光が通る。
予兆はあった。
狭い道を、走ってくる音。
バイクかと思ったが、それは車だった。
車は視線の少しいった先でとまる。
ドアが開き、運転席から人が出てくる。
しばらくこちらの河を眺めた後、右左と、何かを探す。
階段だ。
あいつはこちらに降りようとしている。
どうしようか。
こちらは身を隠してもいいのだが、ここは一発、そのまま佇んで置くことにしよう。
男は橋のそばに階段があるのをみつけ、ゆっくり足を向けてくる。
足音は聞こえない。
相変わらず、流れているのは河音のみである。
砂利に至る。
そうして、橋の下に眼を向ける。
当然そこには何もない。
その下を通る草に眼を向ける。
もちろんそこにも何もない。
そして河を見る。
河は先まで続く。
その反対、山からつながるその奥の、真っ暗なところにいた。
ひっそりと、一羽の鳥が。