【短話】カレーパン
狭い路地。僕はナイフを突きつけられていた。
別に僕は、大して悪いことをしてない。
ただ、ちょっとコンビニで物を盗んだだけだ。
それが今、こういう事態になっている。
男は、マスクをして、黒いハット帽を被って、何やら話しかけている。
でも、口がもぐもぐするだけで何も聞こえてこない。
これだと、こっちも反応できないから、弁解の余地もない。
しかたなく、刺されるまでの間、なぜこうなるに至ったのか振り返った。
盗んだのは、カレーパンだった。
外に出た後、公園のベンチに座り、袋を開けた。
腐った匂いがした。
このパンではない。
背後の茂みからだ。
そこには男が、何かを袋に詰めていた。
それがなんなのかまではわからない。
けれど、忌々しいものであることはなんとなく察せられた。
目が合った。
僕は思わず、カレーパンを投げつけた。
これがまずかった。
それがいま、こんな状態に導いた。