【短話】蜘蛛
今日もいい天気。
そう思って移動していると、急に手足が動かなくなった。
進まない。進まない進まない。焦れば焦るほど、動けなくなっていくのがわかった。
けれど、見えている視界はまったく青い空のままなのである。
すると突然、黒い影が身体の周りを動き始めた。
そいつの腹からは、足が八本生えている。どうやら同族ではないらしい。
そいつはぐるぐると、何度も視界を通り過ぎ、目が回った。
だんだん動く気力もなくなって、知らぬ間に、白い繭に包まれた状態になっていた。
身体が動かないが、頭は動くらしい。
目と鼻の先に、顔を近づけていたので、できる限りのことを捲し立てた。
ただちょっと出かけただけのこと。家には家族がいること。弟はまだ小さくて面倒をみてやっていること。喧嘩したこともあって、反省はしていること。
そいつは迷った挙句、目だけを取った。