1ルーム

色々な1ルームを作って、シリーズ投稿しています。

おかしな遊具

ある公園に、子どもが遊べる遊具がありました。それは、とんがったり、穴が空いていたりします。子どもはそこで飛び移ったり、もぐったりできます。だからここでは、いろんなふうに体を動かせました。

 

でも、誰もまだ、できていない遊びがありました。この遊具には、空高く登るような、伸びる棒がついています。この棒を下から見る分には、登りたくなりますが、いざ、棒の前までくると、地面との距離が高く、棒もだんだん細くなっているので、誰もがたじろいでしまうのでした。

 

ある夜の日、その公園でしてはいけない遊びをしている若者たちがいました。打ち上げ花火です。誰からもみえてないからと、たくさん打ち上げています。ヒューッ、スポッ、ピューッ…。そうやって何回か飛ばしていると、そのうち一つが、あの遊具の棒にあたり、弾けとびました。

 

この公園は明かりもなく大変暗かったですから、その時の遊具の不気味さと言ったら、恐ろしいものでした。人のようでもないし、怪獣のようでもない、この世でないものが、忽然と姿をみせたのです。公園は、シーンと静かになり、再び真っ暗になります。遊具は、今にも動き出しそうに感じられました。

 

次の日、遊具の先っぽは無くなってしまいました。あの花火のせいだったのでしょうか。まさか、コンクリートで作られていたので、そんなはずはありません。しかし、丸っ切りなくなってしまった。この日、子どもはこの遊具で遊ぶことはしませんでした。

 

公園には、この遊具以外にも、ブランコや、ジャングルジム、滑り台などがありました。子どもたちは、それまで遊んでこなかった遊具で、遊び始めるのでした。それでも、遊び始めると、あまり面白くありません。ブランコは、揺れるだけだし、ジャングルジムは、隙間ばかりでつまらないし、滑り台は、ただ登って降りるだけだったからです。

 

子どもたちは、今度は遊具で遊ばず、走り回ることにしました。地面が凸凹していると、体は揺れて楽しかったし、周りの木たちがいろんな形に見えると、頭がくらくらしてこれも楽しかった。でも、やっぱり一番楽しかったのは、先っぽをなくした、あの遊具でした。

 

子どもたちは、あの遊具でまた遊びたいと思いました。そこで、誰かが段ボールを持って来て、他の人はテープや、画用紙をもって来ました。みんなで、あの先っぽを作ろうというのです。少し時間がかかりましたが、その棒はなんとか、遊具にくっつきました。前と見た目はちょっと違いますが、これはこれで、子どもたちは大喜びです。自分たちの遊具で、また、遊べるからです。

 

それから、子どもたちはその遊具で遊び始めました。飛び移ったり、潜ったりするのは、やっぱり楽しいことでした。でも、楽しくないことがおきます。他の子どもたちが、遊ぼうと近寄ってきたからです。せっかく遊んでいたのに、これでは遊べなくなってしまう。誰かが、「僕たちが作ったんだ!」と言います。他の友だちは、「そうだそうだ!」と言いました。そうやって、誰も寄せつけないようにしました。

 

この遊具では、決まっていつも同じ子どもたちが遊ぶようになりました。さらに、なんでも自分が先だと、言ってのける子も出てきました。飛び移るのも自分が最初、潜るのも自分が最初です。その子は、先っぽを作る時にダンボールを持って来た子でした。他のお友だちは、しぶしぶ、その子の言う通り動くようになります。

 

ある時、ダンボールの子が、夜にこの遊具で花火をやるぞと、命令しました。お友だちは家を抜け出したらいけないとわかっていましたが、命令ですから、みんな、部屋の窓からこっそり抜け出し、集まりました。みんなそれぞれ手持ち花火を持って、遊具の中にある洞窟に潜ります。誰かが、火をつけました。プシュー…持っていた花火に、次から次へと火が移ります。プシュー、プシュー、プシュー…。遊具に空いたたくさんの穴から、煙がモクモクと出ていきます。

 

次の日の朝、公園には、大きなものが動いたあとが、ありました。

 

       

(終)