【短話】十秒後
十秒後、何が起こるかわからない。
暗い暗室。
そこに私は閉じ込められたか、自分で入ったのかどちらかである。
角の隅っこにとりあえず背中をつけ、部屋全身の冷たさを感じる。
こうしている間に後七秒だ。
こういうとき、何を考えればいいのかわからない。
私にはボーイフレンドもいないし、親も大して大事だと思ったことはない。
唯一心残りは、5歳下の弟。今ようやく社会人になって、荒波に揉まれている頃だろうと思う。
もう三秒。
私はここで、何か叫ぶべきだろうか。
叫べば、何か起きるだろうか。
外で見ている大衆全体が、何か心の迷いを晴らして、私を助け出してくれるだろうか。
そうだね。そうだよ。後一秒。
私は叫んだ。
声が出たかもわからない。
でも、その箱全体が揺れた。
それを最後に、目の前が真っ白になった。