【短話】セメント
セメントは便利だ。
なんでもそこにいれれば、固まってしまえる。
僕の弱い心もそこに投げてしまえば勝手に固まるだろうに。
そう俯きながら歩いていると、学校にいくみんなが道中で何かを飲んでいた。
セメントだ。
口を開けながら水筒みたいなものに入れて、ずっとドロドロした液体を流し込んでいる。
とっても喉が渇いていたようだった。
だから、こんなことも言っていた。
「あーしんどい。しんどいけど、行かなくちゃいけない。行ったら、楽しいんだぞ、私。楽しめんだぞ、学校。みんなと同じ姿勢で、頑張って固まっていくんだぞ。」
そんなことを言いながら飲むものだから、口からセメントが溢れ出していく。
それは服の中に入って、下着を通り抜け、裾先から、お漏らしみたいに垂れていく。
僕も水筒に入れてきたけど、それをみると今日は、一旦やめとこうって思った。