1ルーム

色々な1ルームを作って、シリーズ投稿しています。

【短話】ピーちゃん

手を伸ばし、胸いっぱいに吸う。
ここはとっても豊かなところ。
みんながいて、一人ぼっちにならないところ。
ピーちゃんが声をかけてきた。

 

ねぇ、一緒に遊ぼうよ。
えー、何するー?
うーん。トランプ!
お、いいねいいね、トランプトランプ。

 

葉っぱをいくつか用意して、地面に丸を書く。
ピーちゃんが手札から一枚置いた。
私も真似て、一枚置く。
ピーちゃんは考えながら、次の一枚を隣に。
私も自分の隣に置いて。

 

あっ。

 

ピーちゃんが言うと、四つの葉っぱを線で囲ってしまった。

 

あ〜。

 

私は、やられたみたいな反応をする。
ピーちゃんは喜んで、全部を手札にする。
次は私の番。
一枚を半分にちぎって、小さくなった円の両端に並べる。
ピーちゃんは、やるなぁ〜と、ニヤッとした笑みを浮かべる。そのままパスした。
次の一手。これが肝心なことのように思われた。私は、一枚を四つにちぎり、一旦真ん中に置いた。
そこから、一緒に配置を考える。
でも、これがなかなか定まらなかった。
既に両端に二枚あるのに、四つを加えるとなると、いいバランスが見つからない。
その時、私は閃いた。
別に、円の中に入れなくてもいいのではないか。ただ、円の外だとダメかもしれない。
なら…
四つを、円の縁に並べた。尖った先がクロスで交差するように。
ピーちゃんはぐわぁっと声をあげ、後ろにすっ転んだ。
勝負は決まったみたい。

 

お昼休みだった。
ピーちゃんは自分の場所に戻ったかと思うと、積み木でさっきを繰り返していた。
よっぽど悔しかったのかもしれない。私、本気出しすぎちゃったかも。
ちょっと反省する。

 

今日、ピーちゃんの迎えは早い。いつもだったら三時なのに、この時間に来ると電話があった。

 

まあ、今日も満足に遊んでくれたかな。

 

太陽の光りが部屋を包む。
窓を開ける。
風が吹いてきた。
門には、お母さんの姿が見えた。

 

ピーちゃんが、どこかに行ってしまう。

 

お母さんが部屋に来る。
挨拶をする。今日はこうだったんですよと、ざっとお話し。もっと話したかったけど、別の子が泣き出してしまって、よろしくお願いしますとだけ伝える。

 

ピーちゃんは、片付ける準備をしなさいと言われ、しぶしぶしている。

 

このまま、ずっといてくれたらいいのに。

 

なんて思ったり。

 

子どもをあやしている脇で、ピーちゃんが周りを窺っている。
お母さんは先に部屋から出て行った。
ピーちゃんはその隙に、積み木を一個、バックに入れたのだ。
手際の良い犯行。慣れてるな、さては…

 

お母さんの手を握られ、門へ向かっていく。
窓から眺める私。

 

ピーちゃんが、門から曲がってしまう。
すると、ピーちゃんが振り向いた。
バックから出したのは、さっきの積み木。
私に見せつける。

 

私は、グッとポーズで返事した。