1ルーム

色々な1ルームを作って、シリーズ投稿しています。

同じことを考えたら言葉で書く

失敗すると、ぐるぐる考えてしまう、そんな自分が嫌でどうして私はこんなんなのか、またぐるぐるしてしまう。

このぐるぐるは、いかにして抜け出せるのでしょうか。

一つは、身体をとにかく動かして、考えていたことを忘れようとすることでしょう。しかし、その失敗がひどいものであればあるほど、まず身体を動かそうなんて思えませんし、意志の力でなんとかして身体を動かしても、終わったあとにあのぐるぐるは戻ってくる。つまり、ぐるぐるから逃れようとしても、すぐ絡み取られてしまうのです。

そこで、ぐるぐるを一旦利用するやり方を僕はするようになりました。それが、言葉で書くということです。

そもそもぐるぐるしている状態ってどんな感じでしょうか。例えば、彼女にフラれた時なんかぐるぐるしました。僕から初めて告白した人で、すごくセンスがあるというか、明るくて、映画をたくさんみている人でした。よく一緒に映画をみて、その後感想を話したりして、色々な気持ちを交換しました。しかし付き合ってからなかなか距離を縮められないままでした。一緒に新宿の映画館をみに行った日、お互いに家に帰った後、電話がありました。

別れ話を切り出されるなんて想像してませんでしたから、混乱しました。「私をどうして好きになってくれたの?」と聞かれたのは覚えていますが、うまく答えられませんでした。僕が好きになった気持ちは、振り絞ろうとする心臓あたりにあったのですが、言おうと思えば思うほど喉を引っ張り、言葉もへしゃげて、どうしても伝えられませんでした。

結局そのまま別れることになり、僕はベットの中に沈んでいました。何がいけなかったのだろうか、でも最初の告白の気持ちはホントだったし、途中で何か分岐点があったのだろうか、でもどうしようもなかったのだろうか、これは経験ってことで諦めるしかない、でもやっぱり彼女みたいな人にはもう出会えないかもしれないし、でも彼女が別れることで幸せになるのならそれでいいか、、、、ぐるぐるぐるぐる、思考が宙に浮かんでいきました。

宙に浮かぶこと、これがぐるぐるしている動きです。言葉の中身が全くありません。というか、自分が具体的に彼女とどう関わってきたのかや、どんな言葉かけをしてきたか等々、地に足の付いた中身からどんどん離れていくのです。もしかすると、ちゃんと思い出すほど自分にとってはつらいから、抽象的な言葉で頭を覆い尽くし、現実逃避していたのかもしれません。

さて、地に足をつけたくないなら、どうすればいいのか。その時、頭に何があるかです。それは言葉です。言葉だけは、もともと地に足がついていません。「犬」という言葉には、いろいろな犬種が当てはまります。そして「犬」という言葉を人に使うと、犬という言葉で、柴犬やダックスフンドなど、お互いにいろいろな話ができます。相手に向かう言葉の使い方をすれば、「犬」にまつわる別のイメージを交換できるのです。「犬」という言葉に、新しく足が生えるのです。これは相手がいなくてもできます。紙とか、スマホのメモとか、とにかく自分の目で文字が確認できればいいわけです。

失敗したら、言葉がぐるぐる運動を始めます。その運動を身体の運動で対抗しようとしても、休んだのち、またぐるぐる運動がやってきます。そこで、そのぐるぐる運動が動かしている言葉、これを画面になすりつけるのです。言葉自体はもともと宙に浮いているので、簡単に付着します。そうすると、違う考えをしている自分にだんだん気づいていくことになります。人は、常に一つの人格であるわけではないからです。3秒前に書いた言葉を今みている自分は、違った自分です。それは自分に似た相手です。頭の中から吐き出された言葉は、自分が多重人格であることを教えてくれるのです。これでようやく、僕は安心できるのです。