【短話】波食うラーメン屋
ガラス張りの座席で、向かいの歩道をみつめていた。
そこに長蛇の列。
一体何に並んでいるんだと、視線を少し右にやる。
店員が先頭にメニューか何かを尋ね、書き取り、店内に潜っていった。
その時めくれた暖簾には、「ラーメン」と書かれてあった。
真昼のこんな暑い時間に、よくぞこれほど並ぶものだと思った。
これらの列は、そうまでして何に並んでいるというのか。
もちろんラーメンであろうが、ラーメンを食べる以上に、何が彼らを引きつけるのか。
回転率は早い。
十分間隔で、列が吸い込まれていく。
その様はまるで、波が店の中に入っていくようだった。
店に押し寄せる波。
反対に、店から押し出される波もある。
満足げに出てくるもののことだ。
しかしその数は、吸い込む数より圧倒的に少ない。
その店は明らかに、エネルギー保存の法則を無視し、波を永遠に飲み込み、ますます肥大した蒸気を放出していた。