【短話】再生する信号機
うたた寝をしてしまった。
急いで夕飯の買い物に出かけなくては。
そうして彼女は、いつもなら行かない近くのスーパーで間に合わせることにする。
エコバックを肩に背負い、横断歩道で立ち止まる。
信号が緑になった。
なんとなく落ち着かない感じがしていた。
すると渡る途中、変な音が聞こえてきた。
「オムライス、チャーハン、中華スープ」
それも、信号機から聞こえてきたのである。
しかもそれは、私の考えている夕食のことそのものだった。
この信号機、そこを通る人の頭を再生してしまうらしい。
得たいの知れない信号機。急いで渡り切った。
他の人がやってきた。
思考はどんどんやってくる。
それを繰り返すだけである。
今足早に、4、5人が渡ってきた。
一人一人、考えることは違う。
音はぐちゃぐちゃ。
そのまま信号は赤になる。
落ち着く。
そしての一言。
「赤です。渡らないでください。」