【短話】喫茶店のトイレ
行きつけの喫茶店には、トイレがあった。
けれど和式。
試しに男女両方を確かめてみたが、ともに和式だった。
和式の便所というのは最初は億劫であるが、実際試してみると意外、あのしゃがみ込む姿勢が楽だったりする。
今椅子に座ってこの文章を執筆しているが、こっちよりもあの姿勢の方が書けるかもしれない。
この姿勢だと腰が悪くなる。猫背になること必死である。
そうして、いつものように用を足していると、窓の方が空いていた。
その奥は誰かの家の石垣になっており、さらに障子がみえる。
そこに猫が通りかかり、僕の方を、用を足している僕の方に何か用があるかのように、じっとこちらをみている。
このまま入ってこられたら困る。
猫はニャーとも鳴かず、ただこちらをみている。
僕は突然、罰が悪いような気がして、ささっと拭いて、大物を流した。
窓の方をみると、目があったのは猫ではなく、障子が空いた、そのおばさんだった。