1ルーム

色々な1ルームを作って、シリーズ投稿しています。

【短話】店

これいくら?
大した値段じゃないよ。
でも、みるからに高そうじゃない。
いや、他のお客さんもそういうんだけど…
意外とそうじゃない?
そう、そう。
もし、もしね、あなただったら欲しい?
それゃ…そうだ。
今、迷ったよね。
いえ、買った時の喜びを想像してました。

その時、人が割り込んできた。
これください。
へい、どうぞ。
あれよあれよという間に買っていった。

ほう。買うんだ。
買うんだよ。
人によってはね。
いや、あなたも欲しいよきっと。
でも、あの人はどうなの。
ええ?
もうちょっと迷った方がいいかと思った。
その是非は言えないなぁ。
でも、お金を使うんでしょ。
ええ。
だったらちょっと考えるべきじゃない。
いやきっとあの人は、前から考えてた。
考えてた?
ああ。以前から何回も通ってたよ。
ここを?
そう、それも昨日からかな。
それ、私より迷ってるってことじゃん。
ああ。かなり迷ってた。
なんか、買った方がいい気がしてきたな。
お、買います?別に買わなくてもいいよ。
買います、買うよ。
はーい、毎度あり。

家に帰り、早速使ってみる。
結果、全く使い物にならなかった。
私は怒り、朝一番、市場に向かう。
すると、店はテントを畳んでいた。

ねぇ。
うん?あー昨日の。
全然これ、ダメだったんだけど。
えー、そうなんですかー。
いや、そうなんですかじゃなくって。
ええ、ええ。
どうしてくれるの?
どうしてくれるのったって、ねぇ。
弁償してくれる?
弁償って、あなたが使ったんでしょう。
何?こんなものを買わせるのが悪い。
それはね、使い方ですよ、使い方。
知らないわよそんなの。
じゃあ、買わなきゃよかったね。

私は怒り、投げつけた。
店主は避け、地面にあたり粉々に。
周りの人たちが見つめた。
私と店主も見つめた。

じゃあ…買うから使い方教えてよ。
おお、そうきますか。
何よ、もう買わないわよ。
あのーその、申し上げにくいのですが。
ん?
もう売り切れちゃいまして。
は?
いやだから、さっき全部売れたんです。

立ち尽くす。
これまでの気苦労が台無しになった。

あのーお客さん、大丈夫ですか。
もういいわよ。疲れた。
そうですか。
もういい。
あの、教えましょうか。

使い方。

店主は部品を拾い上げ、説明した。
壊れてるのに。だから、わからないのに。