1ルーム

色々な1ルームを作って、シリーズ投稿しています。

【短話】双子の流れ星

空に青空が広がっていた。歩いている私。流れる河。浮いていた。小さな石ころが。降っていた。小さな結晶が。それは、私の涙か。

学校からの帰り道。今日も、悪口言っちゃったなって歩く。言葉はもう元に戻らないのに、頭で何度も再生して、抹消された記憶を捏造してみる。違う、現実じゃない。理想ばかりの現実。でも、今歩いているこの道こそ、理想ばっかりで。

河のせせらぎ。スカートの裾が隠れる草っぱ。足首をこしょばせ、イタズラする。お尻をついて、トゲトゲから向こう岸をみる。一匹の鳥。とっくに目があっていた。

瞼を下ろし、耳を傾けた。その道。後ろのチャリンコ。走っている。車の音。人の音。草も同じ。止まっている。それは私だった。私だけだった。

立ち上がる。空が近づいた。首は空を突き抜け流。その空は、たくさん輝いていた。お星様。涙は上に飛んで散らばっていく。手を伸ばす。かき集める。胸に抱く。それでも出ていく。もっと溢れていく。叫んでも叫んでも待ってくれない。私は泣き、身体中の水分がなくなるまでの間。

 

地上を見ていた。そこにしゃがみ込む人がいた。寂しそうに、河岸にいる人。そのまま、草の中に溶けていきそうな人。

それは私じゃない。でも、何かしてあげたいと思った。周りを見渡す。そうか、ここには星空があるじゃないか。彼女は呼びかける。さっきよりも優しい声で。広く、一つ一つに行き渡るように。

 

すっかり夜になっていた。うとうとしていた。帰ろう。もう戻れないんだよ。彼女は星空を見ない。わかっているから。見たら全部思い出しちゃうから。それでも、星は迫ってきた。

走り出した。バックを前後に振り。追いかけないで。追いかけないでよ。頬から涙。さっきより大粒の。

足元に落ちた。転んだ。バックが飛んで、教科書が出る。誰もいない。音だけの道。湿気が降り注ぐ。肩を叩かれた気がした。

仰向く。溺れた。優しく包まれた。

彼女は彼女と手をとって、ゆるりとダンスした。ステップを踏めなくても合わせてくれた。次第に慣れてきて、あちこちに飛べるようになった。

 

誰かが指さした。誰かも指さした。それは、同じ方向を指して交わった。流れ星。双子の流れ。それは、一度交わるも、互い違いに別方向へ飛んでいった。

 

次の日だった。行方不明のニュースが放送されたのは。