1ルーム

色々な1ルームを作って、シリーズ投稿しています。

河底の宝石

ある河の真ん中に、大人の鳥がぷかぷか浮かんでいました。

すごく小さな鳥でした。

でも、羽をパタパタやると、少し大きくみえました。

いつでも飛びそうないきおいです。水が飛びちります。

 

周りにはいつもゴミが流れてきました。

ペットボトルや、タイヤ、お菓子のふくろです。

ダラダラ流れてくるゴミを、鳥はスルスル避けていきました。

そして、最初にいたところへまた戻っていきます。

 

背中にコツっと空き缶があたりました。

すると、中からたくさんの鳥が出てきました。

大人の鳥より小さな、子どもの鳥です。

彼らは泳ぐのができず、そのまま流されていきます。

 

河の先は二つに分かれていました。

一つははやい流れで、もう一つはゆっくりとした流れです。

子どもたちは、ざあざあと、はやい方に進んでいってしまいます。

大人の鳥は急いで、子どもたちの方へ向かいました。

 

じつは一匹だけ、ゆっくりと流されていく子どももいました。

流れていく先には渦があります。

そのまま吸い込まれ、ぽちょんと、沈みます。

すると、河の底にキラキラした宝石をみつけたのです。

 

大人の鳥は、子どもたちを助けていました。

溺れそうな子どもをクチバシでつまんでは、近くのタイヤにのせています。

そして、バシャンと潜って、底を探します。

そこでつまんだのは、宝石でした。

 

そうして、あがる時にうっかり、お腹の中に入ってしまいます。

子どもたちは無事に溺れずすみました。

でも、大人の鳥のお腹は、チクチクして痛いままでした。

あまりにも痛いので、食べ物も食べられなくなりました。

 

それからは、夜もずっと起きていました。

河は真っ暗で、流れてくるゴミによくぶつかりました。

だから、大人の鳥はもっと周りをみるようになりました。

とっても不気味で、さめざめした河を、ずっとみていました。

 

次の日も、ご飯を食べず、夜も寝ませんでした。

その次の日も、次の次の日も、また同じです。

すると、不思議なことに、だんだん首が短くなっていきました。

そうしてしまいには、お腹だけになり、ポコんと、河岸に流されていったのでした。

 

(終)