1ルーム

色々な1ルームを作って、シリーズ投稿しています。

【短話】後ろ姿の自分

歩いていた。僕がではない。僕の前にいる自分が、歩いている。となれば、今語っている私、これは一体誰であろうか。考えても仕方ない、そんな気がしたから、とにかくついていくことにした。


仮にその後ろ姿を少年と言っておこう。少年は今、住宅街の道を歩いている。左脇を歩いている。側には溝があり、そこに車でもきたら片足を突っ込んでしまう。そんな可能性を気にも留めず、少年は前を歩いている。


少年は角を曲がった。私はてっきり、まっすぐいくものだと思って、慌てて追いかける。曲がった。曲がったが、そこに少年はいなかった。


ぞっとする。後ろに何か、いる気配。私は振り向こうとしなかった。振り向いたら負けだと思った。だからそのまま、あの少年だったら進んだであろう道の続きを、今度は右脇に寄り、歩いていくことにする。車は前から来る。だから、溝に気をつけられよう。